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東京高等裁判所 平成3年(行ケ)26号 判決 1992年1月20日

原告 中川製袋化工株式会社

右代表者代表取締役 中川兼太郎

右訴訟代理人弁理士 松田喬

被告 特許庁長官 深沢亘

右指定代理人 大場義則

<ほか一名>

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  特許庁が、平成二年一一月一日、同庁昭和五六年審判第一〇五七一号事件についてした審決を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決

二  被告

主文と同旨の判決

第二請求の原因

一  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和五一年一二月一〇日、「SUN」「サン」の各文字を二段に併記してなる商標(以下「本願商標」という。)につき、第九類「産卵台紙、その他本類に属する商品」を指定商品とし、出願人の業務を「プラスチック製容器製造業兼紙製容器製造業」として商標登録出願したところ、昭和五六年三月一〇日、拒絶査定を受けたので、同年五月一八日、これに対する審判の請求をした。

特許庁は、同請求を昭和五六年審判第一〇五七一号事件として審理したが、平成二年一一月一日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、平成三年一月一九日、原告に送達された。

二  本件審決の理由の要点

1  本願商標の構成、指定商品及び出願の経緯は前項記載のとおりである。

2  これに対し、原査定において、「①この商標登録出願に係る商標は、商標法第三条第一項柱書の要件を具備しない。②本願商標は、商標法第四条第一項第一一号に該当する。」旨認定して、本願を拒絶したものである。

3  よって按ずるに、請求人(出願人、原告)は、願書に同人の業務を「プラスチック製容器製造業兼紙製容器製造業」と記載しているが、その業務記載によっては、原審説示のとおり請求人(出願人、原告)が現に指定商品に関する業務を行っているとは認められない。

4  したがって、本願商標は、商標法第三条第一項柱書の要件を具備しないから、登録することはできない。

なお、請求人(出願人、原告)は、原審において、前記①に対する意見書で「出願人は願書に記載した業務に従事していることはいうまでもなく、本願商標をその指定商品に対して使用するものであるから、この事実を証する書面を別に差出して証明する」旨主張するが、今日に至るもその立証がなされていない。

三  本件審決を取り消すべき事由

1  商標法施行規則による様式第1において商標登録願願書に「業務」を表示することが要求され、これが施行されたのは昭和五一年一月一日からであって、現行商標法は昭和三五年四月一日から施行され、それ以来、右「業務」を商標登録願願書に記載することが要求されるまで十数年間に亘って適用され、右願書に「業務」を記載する必要なく、しかも「業務」の記載が強行規定として文理解釈はもとより、条理解釈をなすべき余地は全く存在しないところ、業務を願書に記載していないことによって商標法第三条第一項柱書きに違背することは法律論上あり得ない。

故に「原審説示のとおり請求人(出願人、原告)が現に指定商品に関する業務を行っているとは認められない。」と認定した本件審決は甚だしく失当である。

2  本願商標の願書に「業務」として記載した「プラスチック製容器製造業兼紙製容器製造業」の表示は、商標法施行規則別表第九類中、産業機械器具の五、農業用機械器具における(六)「蚕種製造または養蚕用機械器具」中の「産卵台紙、散卵収容器、雌雄鑑別機、散卵塩水選別機、散卵洗除機、散卵浸酸機、蚕種検査用機械器具、桑切り機、蚕網、蚕むしろ、飼育箱」が存し、更にその十一「パルプ、製紙または紙工機械器具」の(三)「紙工機械器具」中に「箱製造機械、ダンボール製造機械、袋製造機械」が存在し、右本願商標の願書に記載した「業務」において「紙製容器製造業」はその中に「袋製造業」を包有し、「袋製造業」は「袋製造機械」を業として使用することは理の必然であり、故に右「……兼紙製容器製造業」なる「業務」の表示は本願商標使用事実と全く合致するものであるから、本願商標出願において、本件審決が「原審説示のとおり請求人(出願人、原告)が現に指定商品に関する業務を行っているとは認められない。」と認定したことは事実の認定を根底的に誤っている。

3  原告は、国内屈指の製袋業者であり、それとともに、全国デパートメント・ストアないしスーパー・マーケット等において、顧客に購入品を収納袋に収納して渡す手提げ袋(紙製、あるいはプラスチックシート製)の製造販売業者であり、その他各種紙工品の製造販売業を広く営むものであって、右製袋業、手提げ袋の如きは、それらの製造機械の若干の改良、些少の発展の如きにおいても経済的利益にも影響があり、常に改良、発展が企図されているものであって、工場に据え付けた多数の製造機械その他付属品等に自他商品を甄別するに足る原告固有の商標を付して特有の商品たる製造機械であることを表彰する必要があることは勿論であって、これを排斥する原審決は甚だしく失当である。

第三請求の原因に対する認否及び主張

一  請求の原因一及び二の事実は認める。

二  本件審決の認定判断は正当であり、原告主張の違法はない。

1  商標法施行規則第一条に基づく願書様式第1において、「出願人の業務」を記載することを要求しているのは、商標法第三条第一項柱書に規定する「業務」の審査の必要に基づくものである。

商標法第三条第一項柱書で「自己の業務に係る商品について使用する商標については……商標登録を受けることができる。」と規定しているのは、出願された商標が出願人の業務に係る商品について使用をするものと認められないものであるときは、その商標については商標登録を受け得ないことを意味している。

ここで、「業務」とは、商品を生産し、加工し、証明し、譲渡するものをいい(商標法第二条第一項)、出願人にこれらの業務があるかどうかが問われるものである。

願書への出願人の業務の記載を課しているのは、その立証責任を出願人に課したものである。

したがって、業務についての審査を充実させるためには、願書に出願人の「業務」を記載させることが必要で、かつ、適切であって、「願書に「業務」を記載する必要なく、しかも「業務」の記載が強行規定として文理解釈はもとより、条理解釈をなすべき余地は全く存在しない」とする原告の主張は失当である。

2  本願出願についてみるに、その願書に出願人(原告)の業務が「プラスチック製容器製造業兼紙製容器製造業」と記載されているところ、「プラスチック製容器及び紙製容器」のいずれも、商品の区分第一八類に属するものであって、第九類に属する商品でないから当該記載によっては、出願人(原告)が商品の区分第九類に属する「産卵台紙、その他本類に属する商品」に係る業務を行っているものとは認められない。また、出願人(原告)は、本件審判における意見書において「出願人は願書に記載した業務に従事していることはいうまでもなく、本願商標をその指定商品に対して使用するものであるから、この事実を証する書面を別に差出して証明する」旨述べるにとどまり、この間一〇年以上経過するも、未だ何らの資料の提出もないのであるから、出願人(原告)が指定商品に係る業務を現に行っていると認めなかった本件審決に誤りはない。

3  商標法第一五条は、商標登録出願について拒絶すべき旨の査定をしなければならない場合を列挙しているが、その第一号中に商標法第三条(商標登録の要件)が列挙されている。

したがって、原告が「本件商標を使用する必要性がある。」ということだけでは足りず、出願人(原告)が指定商品に係る業務を行っているものとは認められない以上、原告の主張は理由がない。

第四証拠《省略》

理由

一  請求の原因一及び二の事実(特許庁における手続の経緯及び本件審決の理由の要点)については当事者間に争いがない。

二  そこで取消事由について検討する。

1  原告は、「願書に「業務」を記載する必要なく、しかも「業務」の記載が強行規定として文理解釈はもとより、条理解釈をなすべき余地は全く存在しない」旨主張する。

しかしながら、商標法第三条第一項柱書には、「自己の業務に係る商品について使用する商標については……商標登録を受けることができる。」と規定されており、自己の業務に係る商品について使用する商標であることが登録要件となっていることは、その規定から明らかである。

なお、商標法施行規則による様式第1において商標登録願願書に業務を表示することが要求され、これが施行されたのは昭和五一年一月一日からであり、それ以前においては、願書に業務の記載が不要であったとしても、自己の業務に係る商品について使用しない場合についてまで、登録を認める趣旨であるとは到底解されない。

したがって、願書に業務の記載を要求することは法の趣旨に沿うものであり、何ら違法の謗りはなく、原告の主張は理由がない。

2  原告は、本願商標の願書に「業務」として記載した「プラスチック製容器製造業兼紙製容器製造業」の表示が、本願商標使用の事実と全く合致する旨主張する。

しかしながら、本願商標の願書に出願人(原告)の業務が「プラスチック製容器製造業兼紙製容器製造業」と記載されていることについては当事者間に争いがなく、原告が製袋業者であって、デパートメント・ストアないしスーパー・マーケット等において、顧客に購入品を収納して渡す手提げ袋(紙製あるいはプラスチックシート製)の製造販売業者であることは原告の自認するところであり、商標法施行規則別表第九類中、産業機械器具の五「農業用機械器具」の(六)「蚕種製造または養蚕用機械器具」には、「産卵台紙、散卵収容器、雌雄鑑別機、散卵塩水選別機、散卵洗除機、散卵浸酸機、蚕種検査用機械器具、桑切り機、蚕網、蚕むしろ、飼育箱」が記載され、また第一八類中、包装用容器の四「紙製包装用容器」には、「段ボール箱、ファイバー箱、紙箱、紙袋」が、包装用容器の八「その他の包装用容器」には、「ゴム製包装用容器、プラスチックス製包装用容器、陶磁製包装用容器」が記載されている点からみて、手提げ袋等の「プラスチック製容器及び紙製容器」は、いずれも商品の区分第一八類に属するものであって、第九類に属する商品でないから、本願商標の願書に「プラスチック製容器製造業兼紙製容器製造業」と記載したとしても、原告が商品の区分第九類に属する「産卵台紙、その他本類に属する商品」に係る業務を行っているものとは認められない。

確かに、右「蚕種製造または養蚕用機械器具」のうち「散卵収容器」及び「飼育箱」は、それがプラスチック製あるいは紙製である場合には、「プラスチック製容器あるいは紙製容器」に包含されなくはないが、原告がこれらの商品を製造販売していることを認めるに足りる証拠はないから、本願商標の願書に「プラスチック製容器製造業兼紙製容器製造業」と記載しただけでは、原告が商品の区分第九類に属する「産卵台紙、その他本類に属する商品」に係る業務を行っているものとは認められない。

なお、第九類中、産業機械器具の十一「パルプ、製紙または紙工機械器具」の(三)「紙工機械器具」には「箱製造機械、ダンボール製造機械、袋製造機械」が記載されており、「紙製容器製造業」は、その中に紙袋製造業を包有し、袋製造業者が「袋製造機械」を業として使用するとしても、袋製造業者が「袋製造機械」を商品として生産し加工等するものではないから、原告が商品の区分第九類に属する「産卵台紙、その他本類に属する商品」に係る業務を行っているものとは認められない。

3  原告は、工場に据え付けた多数の袋製造機械その他付属品等に自他商品を甄別するに足る原告固有の商標を付して特有の商品たる製造機械であることを表彰する必要がある旨主張する。

しかしながら、前記のとおり、原告が手提げ袋(紙製あるいはプラスチックシート製)の製造販売業者であることは原告の自認するところであり、袋製造機械を製造販売するものであることを認めるに足りる証拠はなく、また、工場に据え付けた多数の袋製造機械その他付属品等に「本願商標を使用する必要性がある。」ということだけでは、原告が指定商品に係る業務を行っているものとは認められないことは明らかである。

三  よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 元木伸 裁判官 西田美昭 島田清次郎)

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